チェーン薬局は本当に儲け過ぎ?医療経済実態調査は実態と異なる

毎度のことではありますが、「チェーン薬局は儲け過ぎている!」と叩かれています。

調剤基本料で、チェーン薬局だけ厳しくされているのはご存知の通り。⇒薬局の調剤基本料について詳しく紹介

でも、本当に儲け過ぎなのでしょうか

儲け過ぎと言われている根拠を探してみると、医療経済実態調査のデータが基になっていることが分かりました。

そして医療経済実態調査のデータには、ある数字が含まれていませんでした。

それが『配賦』です。

儲け過ぎと言われる根拠

儲け過ぎと言われる理由はいくつか思い浮かぶのですが、そのうちの1つがこれでしょう。⇒社会保障について②(各論)(PDF重いです)

この資料の32ページに、薬局の収益率が載っています。

保険薬局の収益率

これを見ると、6店舗以上の企業の薬局は収益率が突出していることが分かります。

これが、チェーン薬局は儲け過ぎと言われる理由です。

そしてこの図は、平成27年の医療経済実態調査のデータを基にして作られています

医療経済実態調査とは

医療経済実態調査とは、病院や薬局における経営の実態を明らかにし、診療報酬に関する基礎資料を整備するために中央社会保険医療協議会が2年に1度実施している調査のことです。

関連記事>>中医協(中央社会保険医療協議会)って何してるところ?審議会や部会についてまとめてみた

ようは、今回みたいな報酬改定の時に参考にするための、薬局や病院の経営に関するデータです。

決して全ての医療機関を調査しているわけではなく、医療機関を無作為に抽出しています。

医療経済実態調査のデータを実際に見てみた

実はこの医療経済実態調査が実際にどういった項目を調査しているのか、自分は知りませんでした。

なぜなら、自分の周りでこの医療経済実態調査に選出された薬局がいないからです(笑)

ということで、実際に医療経済実態調査の結果を見てみました。

店舗数別の損益状況

上記の図は平成27年の結果を参考にしているようなので平成27年のものを持ってきました。

この数字の中から、損益差額÷収益=収益率として計算しているようです。

前年(度)の損益差額の構成比率が、図の数値と一致しています。

それぞれの項目は以下の通り。

それぞれの項目の内容

これらのデータを見ていると、チェーン薬局には当然あるであろう数字が含まれていないことが分かります。

それが『配賦』です。

配賦とは

配賦については以前に1度記事にしています。

以前の記事>>薬局における「配賦」を考える

まあ簡単に言えば、本社の人の給与や経費です。

本社は直接売上を生むわけではないので、かかる経費や給与を各店舗に配賦して考えます。

つまり、各店舗はその店舗での経費や給与に加えて、本社から配賦された金額をプラスして稼いで初めてプラマイゼロとなるわけです。

なぜ医療経済実態調査に配賦が含まれないのか

本来であれば、収益について考える場合には配賦も含めて考えます。

しかしなぜ医療経済実態調査では配賦が含まれていないのか。

それは、収益や費用を各店舗に調査しているだけだからです。

本社や経理などでは配賦を含めて店舗の数字を見ていますが、店舗側からすれば配賦など知らず、店舗内における給与や経費のみで考えて調査に報告してしまうのも当然といえます。

そういう意味で、医療経済実態調査は決して実態を現わしているとは言えないわけです。

チェーン薬局の収益率が高い理由

とはいっても、やはり店舗単位で考えるとチェーン薬局の収益率が高いのは確かです。

では、なぜ収益率が高いのか。

それはいたって簡単で、チェーン薬局の給与が低いからです。

これも平成27年の医療経済実態調査のデータです。

店舗数別の給与

店舗数が増えるほど、特に管理薬剤師の給与が低くなっています。

給与の構成比率

さらに、損益状況で給与の構成比率を見てみます。

給与の構成比率

店舗数が増える程、収益に占める給与の割合が低くなっています。

ここからも、チェーン薬局の給与が低いことが分かります。

もしこれを、少数店舗の薬局のように給与を高くし、構成比率を同じく20%にしたらどうなるでしょうか。

計算してみると、20店舗以上の薬局の収益率は、11.9%から約5%まで下がります

約5%となると、25店舗の薬局の収益率と大差ありません

このことから、チェーン薬局は儲かっているというよりも、店舗で働く人達の給与を低く抑えているだけと言えます。

チェーン薬局の収益は配賦も考えないといけない

ここまでで分かることは、チェーン薬局は個人の薬局よりも店舗で働く人達の給与を低く抑えつつ、そのぶん本社で経理や営業、採用などの人を雇っているということです。

もちろん、個人の薬局では自分でやらないといけないような仕事も、チェーン薬局の場合には本社の人がやってくれています。

そういう意味ではチェーン薬局の方が店舗の人達の給与が低いのも当然なのですが、それなら収益率を比較する場合には配賦も含めて比較しないといけません

そうしないと収益率が実態とは異なってきますし、その収益率をみて報酬改定を行ってしまうと、チェーン薬局の収益が不当に悪化させられてしまうことになります。

まとめ

以上、医療経済実態調査に配賦が含まれていないので実態とは異なるという内容で書いてみました。

チェーン薬局が儲け過ぎというのが、他の業界と比べてということであればまだ納得できます。

国の医療費は減らさないといけないですし、役員報酬が異常に高い人もいますからね(笑)

しかし、チェーン展開することで医薬品の期限切れなどを減らして、収益率を改善していることも事実です。

そういったことを踏まえても、単純に医療経済実態調査の収益率だけ見て、個人薬局と比べてチェーン薬局は儲け過ぎだというのは少々的外れな気がしています。