薬局の棚卸で在庫を絞る理由

先日の記事で、調剤薬局で棚卸をする理由をまとめました。

調剤薬局で棚卸をする3つの理由

2017.05.28

そこで今回は、棚卸に関連して棚卸時に在庫を絞る理由をまとめてみようと思います。

正直、棚卸のときに在庫を絞るか絞らないかっていうのは意見が分かれるところだと思います。

他の方のブログなどを拝見してみても、どちらかといったら「絞る意味は無い」っていう意見の方が多かったかな?

でも自分としては、会社の経営のことを考えれば在庫は絞るべきだと考えています。

そこで今回は、一般的に言われている理由も踏まえて、在庫を絞る理由を書いてみようと思います。

理由①:棚卸のときに数えやすくなる

この理由は間違いなくあります(笑)

薬が多いと、本当に数えにくいし時間もかかります。

自分も2500種類くらいの薬を在庫してる店舗で働いていましたが、棚卸が結構大変でした。

後発医薬品の種類も増えているので、最近はとにかく在庫する薬が増加傾向です。

なので、棚卸を楽にするために在庫を絞るというのは一理あります

でも、それがメインの理由ではないかなと思います。

ちなみに、添付文書を破棄しておくと棚卸がかなり楽になりますよ!

関連記事>>添付文書を破棄する3つのメリット

理由②:適正在庫の見直し

適正在庫を見直すというのは、一部正しいです。

会社の限られた資金の中で、在庫が多ければ多いほど自由に動かせるお金が減ってしまいます。

貴重な資金が、在庫として薬局で氷漬けになってしまうわけです。

そういった意味で、適正在庫を見直して維持するというのは非常に重要なのですが、何もそれは棚卸前に限ったことではありません。

本来であれば常に意識していなくてはいけないことだからです。

理由③:法人税対策

これもたまに聞きます。

法人税対策で在庫を絞る。

でもこれは間違えです。というか、なんか色々と勘違いしてる可能性があるので簡単にまとめます。

法人税とは

そもそも法人税とは、企業が得た利益に対してかけられる税金です。

では調剤薬局の利益はどのようにして得られるかというと、基本は処方箋を受け付けてお薬をお渡しすることで利益を得ます。

関連記事>>【解説】売上や利益など、薬局の収益構造をシンプルに紹介!

技術料やら薬剤料やら色々ありますが、それらをまとめて薬局の『売上』とすると、薬局の利益は

利益=売上-売上の原価

という式になります。(かなり大雑把です)

この売上の原価は、

売上の原価=期首在庫金額+仕入れ高-期末在庫金額

という式で表されます。

この期首・期末在庫金額を正確に把握するために、一定期間ごとに棚卸をしているわけです。

さて、この2つの式を組み合わせると、

利益=売上-(期首在庫金額+仕入れ高-期末在庫金額)

となります。

この式を見てどうでしょうか。ある棚卸の時だけ突然在庫を絞ると、

利益()=売上-(期首在庫金額+仕入れ高-期末在庫金額())

このように、在庫を絞れば絞る程利益は大きくなります。

法人税は会社の利益にかかる税金ですので、利益が大きくなると法人税も大きくなります。

つまり、法人税の対策のために在庫を絞っているわけではないことが分かります。

ちなみに、毎回の棚卸ごとに在庫を絞っていると、

利益()=売上-(期首在庫金額()+仕入れ高-期末在庫金額())

このようになって、利益に変動はありません。

よって、法人税も変わりません。

固定資産税と勘違いの可能性

実は会社が納める税金は他にもあって、「税金対策で在庫を絞る」っていう人は、法人税ではなく固定資産税と勘違いをしている可能性があります。

固定資産税っていうのは、会社が持っている土地や薬局の建物などの固定資産にかかってくる税金です。

じゃあ薬局の在庫(医薬品)にも固定資産税がかかってくるのかというと、在庫(医薬品)は固定資産ではなく流動資産になります。

つまり、在庫(医薬品)には固定資産税はかかってこないため、これまた在庫を絞る理由にはならないのです。

理由④:財務諸表の数字を良く見せるため

ということで、ここまで在庫を絞る理由をいくつか挙げましたが、どれもメインの理由とは言えないですよね。

理由③の法人税対策なんて、ただの勘違いです(笑)

ここでようやく、在庫を絞る理由として個人的に一番大きいと思っているものを挙げます。

それが、『財務諸表の数字を良く見せるため』です。

在庫を絞ると財務諸表の数字はどのように良く見えるのか

在庫と財務諸表の関係ですが、在庫は財務諸表で見ると流動資産の中に計上されます。

例として、これは2017年3月期の、『日本調剤』の決算説明資料の抜粋です。

一番上に流動資産の項目がありますよね。

その金額が、日本調剤薬局の在庫金額の合計になります。(連結決算なので他の関連会社の在庫金額も含まれています)

棚卸のときに在庫を絞ると、この流動資産の金額を小さくできるわけです。

会社の評価が良くなる

では、流動資産の金額が小さいとどういったメリットがあるのか。

これは、会社を財務諸表で評価する人たちからの評価が良くなります。

ようは株主と銀行からの評価です。

株主からの評価

株主はまさしく財務諸表を見て会社を評価します。

在庫を抱えずに現金が残っている会社と、在庫を抱えて現金の無い会社、どちらの評価が高いでしょうか。

間違いなく前者ですよね(笑)

銀行からの評価

銀行からの評価も同じで、銀行から融資を受けようとする時には必ず財務諸表を見られます。

そして、会社の資産が過剰ではないかもチェックされます。

資産(特に固定資産)が過剰ということは、先ほども書いたように自由に動かせるお金が少ないということだからです。

会社の経営が危なくなった時、自由に動かせるお金が多いか少ないかというのは生死を分ける重要なポイントです。

銀行も、経営の危ない会社にはお金を融資したくないですからね。

こういった理由から、棚卸の時には在庫を絞るわけです。

まとめ

以上、今回は調剤薬局の棚卸で在庫を絞る理由について簡単にまとめてみました。

いかがだったでしょうか。

財務諸表に関しては、自分には関係ないっていう認識の方が多いかもしれません。

現場で働く人間からすれば正直どうでも良い話ですよね。

どちらかといったら『棚卸の時に数えやすい』とか『適正在庫の見直し』といった理由の方が重要かもしれません。

しかし、少し客観的に会社の経営のことまで見てみると、今まで嫌々やってきた棚卸ももう少し主体性を持って取り組めるのではないでしょうか。

今回の記事を読んで、少しでも薬局の数字だったり経営の部分に興味を持ってくれる人が増えてくれれば良いなと思います。

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